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うさみみ出張所

創作専用  気が向いた時に、適当に、色々と。

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記念すべきひとつめの小話は特撮です。
侍戦隊シン○ンジャーの二次。
みつば姉ちゃんの話です。読んでくれた相方に「お前はみつばに夢を見ている」と云われました(笑)。
長い気がしたので、前後編に分けてみました。
第41幕と被ってる点があるけど気にしない方向で。京都弁がおかしくても流す方向で(笑)。
ではどうぞ。
 

志葉家に家臣の侍たちが集結してから、二ヶ月が経とうとしている。
始めは外道衆との戦いや黒子が世話する志葉家の生活に、若干のぎこちなさや戸惑いが伺えたが、ようやくそれらにも慣れてきているようだ。
各々自分の生活スタイルを確立し、また「戦う」ことにも場慣れしてきた。
それは、ずっと一人で戦っていた志葉家当主然り。
周りに爺や黒子以外の人間が常に存在するということにどこか違和感と僅かな緊張を感じていたが、最近ようやくそれも薄れてきていた。
各人の性格等はおおよそ把握した。どう扱えばいいか大体掴んだ。それらを考慮し、戦術を立てたり修行メニューを組んだり出来るようになった。
それでもまだ、時々驚くようなことがある。
現時点で一番意外だったのは、ことはの精神的な強さである。
アヤカシに何を云われても怯まず突っ込んで行った。他の誰もが、丈瑠でさえダメージを受けたというのに。
最年少だからと軽んじていたわけではないが、それでもやはり驚いたのは確かだった。
そんなことを漠然と考えながら、丈瑠が縁側を歩いていると、少し先にちょこんと腰掛けている背中に目が止まった。
ふわりとした髪に小柄な少女。たまたま今思い浮かべていたことはだった。
しかしことはは普通に腰掛けているわけではなかった。座った状態で上体を折り曲げ、微かに震えていた。胸を押さえているのか、両手は太ももと上体の間に挟まれている。
丈瑠は怪訝そうに少しだけ眉根を寄せ、ことはに近寄った。
「ことは? どうかしたのか?」
「あっ。殿さまぁ」
呼ばれて顔をあげたことははぱあっと花が咲いたような満面の笑顔を丈瑠に向けた。まさかそんな顔を見せられるとは思っていなかった丈瑠は面食らう。が、すぐに、体調が悪いわけではないようだなと思い、適当に声をかけてその場を去ろうとしたのだが、一足先にことはが口を開いた。
「お姉ちゃんから手紙が届いたんです」
一瞬何のことかと思ったが、先程の自分の問いかけにことはが答えただけだと気付き、「そうか」と返す。
「ほんで、お姉ちゃん、笑うてたんです」
うち、ほんまに嬉しくて、と続けることは。どうやらそれで打ち震えていたらしい。彼女の手元に丈瑠がちらりと目をやると、数枚の便箋と一枚の写真が握られていた。
「ことはには姉がいたのか」
「あ、はい」
云われてことはは、丈瑠には姉の話をしたことがなかったことに思い当たった。殿さまにお姉ちゃんの話を聞いて欲しいなと思い、丈瑠を見ると、察したかのように丈瑠はことはの隣に腰を下ろしていた。
 
 
      ゆ  き  や  な  ぎ    
 
 
「ことはにシンケンイエローを継がせることにした」
病床で父から放たれた言葉に、ことはの姉、みつばの頭は「そんな」という無念めいた焦燥と「やはり」という諦観に似た得心で満たされた。
少しの間目をぱちぱちと瞬きしていたが、みつばは
「判りました」
とため息と共に細く吐き出した。
彼女の父はその反応に、一度深く頷き、そして部屋を静かに去っていった。
障子がかたんと僅かに音を立て閉じられると、途端に外の音が室内に入り込んできた。風が雨戸を鳴らす音、木々が揺れる音、虫の声、何かが倒れる音。
みつばは天井の染みをぼんやり眺めながら、父の言葉を反芻していた。
お役御免というわけやな……と改めて思うと、涙が滲んできた。
物心が付く頃には既に刀を振るっていた。将来はシンケンジャーになるのだと寝言で口走るほど、繰り返し聞かされてきた。侍の心得、主君である志葉家のこと、他の家臣たちについて、様々なことを教えられてきた。
それが己の全てだったのだ。
例え懸念事項がひとつあるとしても。
生まれた時からみつばは病弱だった。両親は心配したが、成長すれば、体を鍛えれば、治るのではないかと淡い期待を抱いていたが、それは甘い考えだった。
稽古に励みすぎて体調を崩すたびに、「侍としてやっていけるのか」と両親が相談していたことをみつばは知っている。そしてそれを一番強く憂慮していたのは己であり、一番悔しく思っているのもまたみつば自身であった。
いつか年の離れた妹が自分の代わりに侍にさせられるのではないか。
そう案じる気持ちは小さくなかった。
妹のことはは、一応程度に剣の稽古をさせられていた。侍云々も、みつばが説教されているのをいつも傍で聞いていたから、理解はしていないかもしれないが漠然とは掴んでいるだろう。
しかしみつばは、ことはには戦いとは無縁の、普通の女の子でいて欲しかった。シンケンジャーとしての責務や過酷さを可愛い妹に背負わせたくはなかった。
それが。
涙が頬を伝う。みつばは誰に見られているわけでもないのに、隠すように頭まで布団を被った。
無理をすれば、戦うことは出来る。
が、無理をしなければ戦えないのであればそれは、単なる足手まといだ。
布団の中で、みつばは声を押し殺して少し泣いた。
「しゃあない…と割り切るしかないんやろな」
涙の止まったみつばは、布団から顔と腕を出した。天井に向けて手を伸ばしてみる。そのまま手のひらを自分の方にむけると、長年竹刀を振るってきたため出きたタコが見えた。自分のこれは無駄になり、そしてこれからことはがこれを作っていくのだ。
可哀想になあ、とみつばはため息を付いた。
みつばの代わりにシンケンジャーになることが決まったことはは、今までとは全く違う人生を歩まなくてはならない。
召集されれば、普通の女の子としての生活も、夢見ていた未来も、友や家族まで、全てを剥奪されるのだ。なまじそれを知っている分、余計辛いだろう。
それでも、シンケンジャーは必要なのだ。どうしても。
ことはは苦しくても頑張るしかないのだ。
妹が侍になるということに思い巡らすと、みつばは今度は「大丈夫やろか」と心配になってきた。
ことはは学校でいじめられたとよく泣いて帰ってくる子だ。
強い侍になれるだろうか。
そう考え、いや、ならなくてはいけない、と思うと同時に手をギュッと握った。
自分のためにも、仲間のためにも、強くなければならないのだ。
ことはが強くなるために、自分が出来ることはないだろうか。
見守ることしかできないのだろうか―――――。
みつばは再び手を開き、それをじっと見つめた。

                                           後編へ続く

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