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うさみみ出張所

創作専用  気が向いた時に、適当に、色々と。

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タイトルにいつもの如く悩みまくり、もう駄目だと若干逃げました。だからあまり意味はありません。
音が気に入ったのがこのタイトルにした最大の理由。

       ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  
 
「お姉ちゃんはうちとちょっと年が離れとるんですけど、強くて、ホンマに優しいお姉ちゃんなんです。うちがいじめられて泣いていると、笛を吹いてくれて。それを聞くと、うちはいつも元気になりました」
隣の丈瑠に少し緊張しながら、ことはは口を開いた。姉の話をすることはの顔がほころんでいるのを見て、姉が本当に大好きなのだなと丈瑠は思った。
「ホンマは、お姉ちゃんがシンケンイエローを継ぐはずやったんです」
ことはの言葉と顔が翳る。
「せやけど、お姉ちゃん、体が弱くって。せやからうちが継ぐことになったんです」
無意識にことはの手に力が込められる。握られた手紙と写真が幾分歪んだ。
「うち、不安でした。うちに出来るのかって」
「……」
「うちがお姉ちゃんの代わりに侍になるって決まった時から、お姉ちゃんの方がよく泣くようになったんです。あの強かったお姉ちゃんが。そんで、云うんです。『ごめんな。お姉ちゃんのせいで、アンタが戦うことになるかもしれん。ことはにはそんなん似合わへんのに……』って」
沈んでいたことはが突然顔を上げた。キッと根性の据わった表情に変わっている。
「それを聞いた時、うちはもう泣いたらアカンと思いました。泣いたら、お姉ちゃんが心配して、もっと泣かはる。だから絶対に泣いたらアカン、笑うんや、て」
そして少しはにかんだ顔を丈瑠に見せた。
「そうか」
「はい」
丈瑠の短い相槌に、ことはは嬉しそうに頷いた。
ことはが侍の修行と姉の思い出を話しているのを聞きながら、丈瑠は別のことを考えていた。
ことはが侍になると決まってから、ことはの姉はよく泣くようになった、と云ったが。
泣きすぎではないか?
自分が元気ならばことはは普通の女の子として生きていけたのに、と申し訳なく思う気持ちは判る。
どうしようもないことではあるが、己の不甲斐なさに涙が滲んでいてもおかしくはない。
今まで積み重ねてきたものが無意味と化し悔しかったということもあるかもしれない。
確かに泣く理由は沢山ある。
だが。
やはりどう考えても、ずっと引きずって泣くようなことだろうか、と丈瑠は首を傾げた。
世界を守るために、シンケンジャーはどうしても必要なものだ。
シンケンジャーが守らなければ、この世は外道衆に蹂躙される。
それはあってはならない。
そのために能力を持つ者を、一人前の侍になるよう育てなければならない。
だから、戦いが似合わないとか、そんなことは関係ない。
戦わなくては死ぬのだから。
おそらく小さい時から、ことはの姉も侍として教育を施されてきていたはずなのだ。ならばそれが判らないはずはない。
それに、そんなに泣いてはことはに対し失礼ではないか。
姉の枕元で、ことはが侍になりたくないと泣いていたなら、「ごめん」という気持ちで泣くのも判る。
だが、先程ことはは侍になることに「不安だった」とは云ったが「嫌だった」とは云わなかった。
病弱な姉をずっと見ていたのだから、「もしかしたら自分が」とぼんやり考えていてもおかしくない。姉の代わりが決まった時に、ことはは幼いなりにも腹を括ったのであれば。
頑張ろうとしているのに、それを憐れむというのは如何だろう。下手をすれば士気が下がりかねない。
本来ことはにかけるべき言葉は、激励や慰撫なのだ。
それが判らないとは思えない。
故に。
それこそ、ことはのため、か。
丈瑠はことはに気付かれないよう、小さく息を吐き出した。
ことはの性格を熟知している姉は、激励等では与えられないものを、侍となることはに与えたかったのだろう。
それは――強さ。
強くなければ戦えない。
強くなければ仲間に迷惑がかかる。
強くなければ勝ち続けられない。
強くなければ、生き残れない。
ことはに、強さを。
ことはの姉は、諭すのではなく激励するのでもなく、泣くことでことは自らに「強くならねば」と思わせた。「姉のために強くなる」と。
ことはの姉がよく泣いていたのは、そのためではないか。
勝手な想像かもしれないが、と丈瑠は隣のことはをちらりと見た。
「せやから、うち、手紙書いたんです。何とかシンケンジャーしとるよって。そしたら今日お姉ちゃんから返事が来て。写真が同封されてました」
ことはは丈瑠に「これです」と写真を見せた。
ことはより少々年上の、目と口元がことはによく似た女性が、両親らしき二人と一緒に写っていた。ふんわりと笑った、暖かい笑顔を見せている。
いい笑顔だ、と丈瑠は思った。顔色は少し白いが、体が弱そうには見えない。それも、シンケンジャーとして頑張ることはを心配させないための無理なのかもしれない。
「泣いてたお姉ちゃんが笑うてるんが、うちホンマに嬉しくて」
そう云いながらことはは相好を崩した。
丈瑠は再び写真に目を落とす。
ことはが一人前の侍として戦えていると知り、もう泣く必要はないと思ったのだろう。
これからは「姉のために」ではなく、「仲間のために」「守るべき人たちのために」、ことはは強くなろうとしていると判り、お役御免とばかりに姉は笑顔を見せた。
自分はもう、ことはのことは心配していないと判らせるために。
丈瑠は得心した。
なるほど。ことはを強くさせたのは、この姉だったのか。
「…ことはの姉は、立派な侍だな」
今までの会話の流れで一体何故そんな台詞が導き出されたのか。ことはは一瞬きょとんとしたが、姉を褒められた嬉しさを顔中に表し、
「はいっ!」
と元気よく頷いた。
丈瑠も少し口角を上げ、頷き返した。
 
ことはが握る手紙の最後にはこう記されていた。
「うちは応援しか出来へんけど、毎日ことはの無事を祈っています。うちに出来るのは、もうそれだけやから。」
ことはの姉のみつばは、今はただ、妹の無事を一心に願っている。
 
                                            《閉幕》
 
**********************************
 
第41幕で姉ちゃんから手紙が届いてましたな。
若干この話と齟齬が出てますが、私はアレも計算だと自分の中で整合をつけました。
外道衆との戦いが激化してると耳に挟み、さすがに心配して。
作中のことはが姉について語ってるトコは、本編で千明に話してたのほぼそのままです。「よく」が引っかかって出来た話。
 久々に縦書きで書いたら、すげ書き辛かった。相方にも「読み辛い」と不評(笑)。
やっぱり文章書くならワープロだな。
 

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